ODA(政府開発援助)と環境影響問題
 

日本のODA(政府開発援助)によるさまざまな案件調査、事業が開発途上国で進められています。ケニアでも進められていますが、その3例の現状をお伝えします。

大ナクル水道計画                 1993年6月、釧路市でラムサール湿地保全国際条約会議が開催されましたが、その会議中にNGOからは「フラミンゴを守れ」という意見と、ODA実施側からは「環境を守る援助」であると反論し、両者の議論が新聞紙上を騒がせたのをご記憶にあるかと思います。それがODAプロジェクト「大ナクル水道計画」でした。ナクル湖は流失河川のない湖で、蒸発による湖水が強アルカリ性になり、そこに3種の藻が増殖し、それを捕食に来る約100万羽のフラミンゴが乱舞する特異な生態系を有する湖です。そこへナクル盆地外から浄水をパイプで供給するため、86年トラシャ取水ダムが日本の円借款によって建設されました。盆地外の水を運び込み、排水が処理しきれないまま湖に流入すれば、特異なエコシステム、特に水鳥に多大な影響を与えるとして批判されました。そして、排水処理場がODAの見返り金でリハビリされました。それ以降、ボクはナイロビ博物館主催による年2回のナクル水鳥数調査に継続参加しています。処理しきれない排水が湖に流れ込み、湖水の重金属汚染が報告され、地球環境の温暖変化や生態などで短期間に結論は出せませんが、水鳥の数は減っているようにみえます。人口増加する市への水道水供給も大事ですが、環境影響の配慮が望まれるODA事業でした。左の写真はその取水ダムです。

ソンドゥ・ミリウ水力発電計画

元鈴木宗雄代議士が国会で証人喚問を受けた疑惑のソンドゥ・ミリウ水力発電計画とは、ケニヤ西部キスム地方のビクトリア湖に注ぐソンドゥ・ミリウ川で進められている「ソンドゥ・ミリウ水力発電事業」(水力発電用ダム=60MW,300MW×2基、流れ込み式発電所)のことです。 国際協力銀行(略JBIC)による総工費200億円の円借款。97年にJBICによって約70億円の円借款が供与さ、130億円の第二期円借款が04年に供与されました。事業計画はケニア電力公社が日本工営にコンサルタントを委託し、受注は鴻池組で進められています。1999年3月着工、2003年完成予定でした。これは1985年に国際協力事業団(JICA)によって本事業のマスタープラン「ソンドゥ川多目的開発計画」が策定され{現場では地域住民への灌漑プランについて説明なく、世界銀行・日本政府などに提出された提案との大きな違いがありました。)、最優先事業でしたが田中元外相の「見直し」により一時中断されていました。

ソンドゥ・ミリウ川の水源になるマウ西フォレストでは森林破壊がひどく、河水の枯渇・鉄砲水が心配されます。マウ森林近隣の住民マサイのオレ・コロス氏(住所:P.O.Box 808,Narok) のコメントでは、「以前、森を歩くとパフパフと水を含む地面がスポンジ状になっているのを感じたものだが、いまでは木がどんどん減って地面がかたい。大事な水源林の維持が難しくなったので、保水率が急激に減少しているのだ。」と言っています。マサイ族の牧畜生活にとってもゆゆしき出来事なのです。

指摘されている諸問題

  • 事業による環境、とくに広範囲な森林伐採、工事による水質汚濁、水鳥、魚類、家畜への影響。
  • 地域住民への補償、伝統文化の影響{ルオ信仰対象であるソンドウ川オデイノの滝が涸れる恐れ}。
  • 汚職・受け入れ機関の信頼性、相手国の債務返済能力についても慎重な判断が求められている。

ナイロビ都市交通網整備計画調査

現在、ナイロビ都市交通網整備計画の準備調査中ですが、ナイロビ・南部バイパス計画も進行中です。この計画には、JICAによる92年度のナイロビ・南部バイパスの詳細設計結果が用いられています。工事実施の資金は世銀が供与予定のため、JICAは既に関知していないというのが基本姿勢です。実施設計を実施した当時、日本でもケニヤでも、EIA(環境影響評価)は義務付けられていませんでした。ところが、南部バイパス予定地には希少種のサボテン・ユーホビアが自生し、ンゴングロード森林保護区を通過し、特異な生態地域であるオンデリ沼が縮小されるなど、環境への影響が心配されているのです。したがって、工事の実施に伴って、環境への影響を緩和する措置が求められています。またバイパスへのアクセス・ロード予定地にはキベラ・スラムがあり、そこでの人権問題 住民移転計画が議論されているなかで、住民の強制立ち退き執行問題も起きています。

その他、大水で流されたタナ河灌漑農地のように稼動しない事業計画などもあり、日本国民の税金は無駄に使われ、ケニヤ国民に重債務が残りました。開発途上国に開発が望まれますが、環境への影響は地域住民にはまだ理解されていません。すでに日本で苦い環境破壊の経験を経てきたことを援助機関は開発途上国で再現させているようにみえます。ODA開発にともなう適切な緩和措置が求められています。

 

トップインデックスプロフィール獣医チンパンジー キキ 野生動物マサイとツェツェバエ

ODA(政府開発援助)と環境問題エイズ、スラム友の会について連絡・募集

©Africa & shumpei kambe fellowship